
因陀羅は、汴梁(べんりょう)(開封)の大光教禅寺に住した高僧とされる。
老木の下、岩に座す高僧・智常禅師が指をさしながら張水部(ちょうすいぶ)に何かを諭す様子が描かれる。張水部は水部の長官を歴任した中唐の詩人・張(ちょう)籍(せき)と考えられている。
樹木や岩、衣文線は擦(かすれ)や粗い筆致で仕上げ、所々濃墨を加えアクセントとする。一方、人物の面貌表現には、頭髪や髭の柔らかさ、微妙な表情を描き分ける細やかさがあり、背景や衣文線との対比も魅力である。元末明初の高僧で、能書として知られる楚石梵琦(1296~1370)の題詩をともない、分蔵される国宝「禅機図断簡」5点の一つとして著名である。