静嘉堂文庫美術館

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About静嘉堂について

館長メッセージ

新美術館「静嘉堂@丸の内」
開館に寄せて

館長画像
河野元昭
(静嘉堂文庫文庫長・静嘉堂文庫美術館館長)

静嘉堂のコレクションには、岩﨑彌之助、小彌太父子の姿勢を示す三つの特徴があります。一つには、明治時代、西欧文化偏重の風潮のなかで、東洋固有の貴重な文化財の散逸を防ごうと可能な限り「一括で購入」したこと。二つには、専門家の意見を仰ぎ、文化的価値の高い美術品・古典籍を集め、日本・東洋美術史を網羅するかのような正統的なコレクションになったこと。三つには、同時代の芸術家と交流し、彼らへの支援を惜しまず、古いものだけではなく当時の「現代美術」をもコレクションに加えたこと。
彼らが果たしてきた文化的な貢献、「フィランソロフィー」の精神は、今私たちが生きる時代においてもまさに求められている姿勢でありましょう。

私が7代文庫長・美術館長をおあずかりしたのは2015年、世田谷区・岡本の静嘉堂文庫美術館がリニューアルした年でした。
父・彌之助の三回忌に際し、小彌太はこの地にジョサイア・コンドル設計の霊廟を建立、「籩豆静嘉へんとうせいか」の名に恥じぬべく、父から受け継いだコレクションを拡充し整えました。更に十七回忌に当たり、桜井小太郎設計で建設した洋館と書庫が、今の静嘉堂文庫の姿です。その後財団法人として、書籍と美術品を広く一般に公開する先鞭をつけ、小彌太没後1992年に美術館開館に至ったこの場所は、永く皆様に親しまれてきた静嘉堂のアイデンティティです。

一方、彌之助は静嘉堂を創設した当時から着手していた丸の内の開発の中で、近代的なビジネス街にミュージアムを作りたいという思いを抱き、コンドルに図面をひかせていました。この丸の内という場所もまた、静嘉堂のアイデンティティであると言えます。「一丁倫敦」と呼ばれた街並みの代表的建築であるコンドル設計の三菱一号館は現在、三菱一号館美術館として復元されていますが、次に同じくコンドル設計で建てられた三菱二号館の跡に建てられたのが、このたび静嘉堂の新美術館「静嘉堂@丸の内」がオープンする明治生命館(設計:岡田信一郎)です。桜井設計の旧三菱銀行本店や旧丸ビルと共に小彌太の時代の丸の内を彩り、今なお歴史を紡ぐこの重要文化財建築の中で、父子が蒐集した国宝・重文をはじめとする名品をご覧いただけることに、深い縁を感じます。

創設から130年の今年、静嘉堂の更なる100年、200年の歴史を作っていく、そのスタートラインに私たちはついたばかりです。コロナ禍の新しい時代ですが、より多くの方々に、これまでよりももっと身近に静嘉堂の至宝をお楽しみいただけることは、望外の喜びです。

2022年10月

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