高さ約10cm、重さが600gに近い、破格の大きさを誇るこの田黄は、田黄の愛好家として知られる大佛次郎も一目して言葉を失ったというエピソードをもつ。「橘皮黄(蜜柑の皮のような色)」と称される、やわらかな色調の黄褐色を呈し、ことに印面(無刻)には、みずみずしい大根の切り口に似ることから蘿蔔紋(蘿蔔は大根のこと)と呼ばれる細紋が顕著に認められる。火炎宝珠を囲む大小五頭の龍と、日輪の下に向かい合う雌雄の鳳凰・牡丹が、石の表皮を用いた彫刻に彫りだされている。平成13年に新関欽哉氏より当館に寄贈された。