繊細な美しさと引き換えに、様々な損傷を受けやすい脆弱さをはらんでいる東洋の文化財。静嘉堂は、守り伝えられてきた貴重な所蔵品をよりよい形で後世に引き継ぐため、作品の修理事業にも力を入れています。
本展では、運慶作か!?と話題の仏像「木造十二神将立像」のうち4軀をはじめ、修理を終えた仏画を初披露するとともに、作業の際に使用する材料や道具もともに展示し、修理過程をよりわかりやすく御覧いただきます。また、伊藤若冲「釈迦三尊像」(京都・相国寺蔵)の原画としても知られる伝 張思恭「文殊・普賢菩薩像」など、仏教美術の名品も合わせて展示いたします。
先人の努力を受け継ぎ、現在の技術によりよみがえった仏の美をお楽しみください。
京都・浄瑠璃寺旧蔵の本作は、明治時代に寺を離れ、現在「子神」「丑神」「寅神」「卯神」「午神」「酉神」「亥神」の7軀が当館に、「辰神」「巳神」「未神」「申神」「戌神」の5軀が東京国立博物館に所蔵されています。
近年、明治の新聞に、十二神将像の像内に「大仏師運慶」という名を含む銘文があった、という記事が掲載されていた事実が提示され、運慶作か!?との議論が活発になっています。調査の結果、修理を終えた4軀の中に銘文は見つかりませんでしたが、今後、引き続き3軀の修理を進める中で、新たな発見があることが期待されます。
「寅神像」
「卯神像」
「午神像」
「酉神像」
左へと向けられた普賢菩薩と白象の視線、流れ出る五色の雲の表現は、菩薩が今まさに顕現する瞬間を印象的に描き出します。また繊細な表現や画面を彩る透明感あふれる色彩は、普賢菩薩の厳かさを余すところなく伝えているといえるでしょう。類例の多い普賢菩薩像の中でも優品として知られる本作が、このたび、修理後初披露となります。
「普賢菩薩像」鎌倉時代・13世紀
岩座に座す羅漢が、金に変わろうとしている岩を指し示す様子が描かれています。羅漢や他の人物、器物等には柔らかな色彩と金泥(きんでい)がほどこされ、画面右上には青みがかったグラデーションの雲霞がたなびくなど、清雅な雰囲気を漂わせています。宮廷絵画の優品の新たな装いをぜひご覧ください。
「羅漢図」南宋時代・13世紀
「百万塔陀羅尼」は、印刷年代が明確な、現存する世界最古の印刷物の可能性が指摘されています。奈良時代に称徳天皇(718~770)の発願によって作られました。6年をかけて木造三重小塔を百万基制作し、その中に、印刷した4種の陀羅尼(仏教の呪文)を1枚ずつ納め、法隆寺をはじめとする十大寺に各10万基ずつ分置したものです。このたび、静嘉堂所蔵の全40基を一堂に公開いたします。
「百万塔」 奈良時代・神護景雲4年(770)
本図は、「釈迦文殊普賢 張思恭(ちょうしきょう)筆 三幅」として、京都・東福寺に伝来しました。現在は、そのうちの左右2幅が静嘉堂に伝存しています(中幅はクリーブランド美術館蔵)。精緻な文様や多様な色彩、金泥を使用して描かれた本図は、伊藤若冲(じゃくちゅう)(1716~1800)が「動植綵絵(どうしょくさいえ)」とともに相国寺に寄進した「釈迦三尊像」(京都・相国寺蔵)の原画としても知られ、若冲が「巧妙無比」と称えた名品です。
伝 張思恭「文殊・普賢菩薩像」元時代・14世紀
東京都美術館で2016年4月22日(金)から5月24日(火)まで開催される「生誕300年記念 若冲展」に、若冲が本図にならって描いた「釈迦三尊像」3幅が展示されます。当館の原画と見比べることにより、大きさや色彩にみられる表現上の違いがわかり、若冲の個性をより感じていただくことが可能となります。同時期に両作が出品される貴重な機会を、ぜひお見逃しなく!
伊藤若冲「釈迦三尊像 普賢菩薩像」
江戸・明和2年(1765)以前
京都・相国寺蔵
伊藤若冲「釈迦三尊像 釈迦如来像」
江戸・明和2年(1765)以前
京都・相国寺蔵
伊藤若冲「釈迦三尊像 文殊菩薩像」
江戸・明和2年(1765)以前
京都・相国寺蔵
本作は、暁斎のパトロンであった日本橋の小間物問屋、勝田五兵衛の依頼により制作されたもので、わずか14歳で夭折した五兵衛の愛娘たつの供養として描かれました。たつが阿弥陀如来と共に冥界めぐりを楽しみ極楽往生を遂げるまでの様子が、暁斎ならではの繊細かつ勢いのある筆づかいや華麗な色彩で表現されています。
河鍋暁斎「地獄極楽めぐり図」明治2~5年(1869~1872)
全40図のうち「極楽行きの汽車」
期間中、ラウンジにて国宝「曜変天目(稲葉天目)」、重文「油滴天目」を全期間展示いたします。
自然光によって様々な表情を見せる曜変天目をお見逃しなく!
地下講堂にて 先着120名様(当日開館時より整理券配布)
※整理券はお1人様につき1枚のみの配布、開場13:15分より整理券番号順に入場
展示内容・作品について学芸員が解説します。(展示室または地階講堂にて)